審査員講評

O JUN氏画家・東京藝術大学名誉教授

 応募された全ての絵を見て、大きな驚きとたくさんの発見をすることは毎年のことではありますが、今年も同じようにありました。コロナが落ち着いてきて、人の集まりやどこかへ外出の機会も増え、様々な場所で見たものが絵に描かれることがまた増えて来たのではないかと思いました。同時に、日々の生活の中で身の回りの事物を描くことも依然として多く、見ること、感じることを絵に描いてみようという意欲は健全だなと感じました。そういう中で私は、今年は、自分の顔や姿を描いた絵、自分に向けられる眼差しに惹かれました。自分を見つめる時間が絵になることの実証としての自画像はやはり特別な事のような気がします。自画像でなくても目の前の対象を見ること自体が自分を確認することではないだろうか?見える、見えにくい、見間違うことにいつも「自分」が映り込んでいると思います。今年の全ての絵にそれを感じました。

 入選受賞された皆さんに心からお祝いを申し上げます。また皆さんのことをいつも近くで見守り励ましご指導いただいたご家族や先生方に深く感謝いたします。

青栁 路子氏東京藝術大学准教授、教育研究者

 本年度のコンクールも魅力あふれるたくさんの作品に出会うことができました。緻密な描写、その対極的な大胆な筆致、工夫のある色使い、画面を生かした構成、描かれたモチーフから感じられるこだわりや思いなど、その作品にしかない魅力がありました。全応募作品は、オンラインで見ることができます。優秀賞に選ばれた作品はもちろん、残念ながら選ばれなかった作品の魅力的な輝きもより多くの方に見ていただけることを願っています。

 作品を見ると、どんな思いで描いたのかな、ここを頑張って作品をつくったのだろうなどと、思いは描いた子どもたちへと飛躍し、作品をとおして子どもたちと出会っている気持ちになります。身近にある紙と鉛筆から専門的な画材までを用いて、子どもたちが工夫を凝らし、没頭して描き作るかけがえのない時間がこれからも豊かなものでありますように、私も応援し続けたいです。

西田 克也氏西田克也デザインオフィス グラフィックデザイナー

 私はこのキラキラっとアートコンクールに協力している社会福祉法人東京コロニー アートビリティで、長らく応募作品の登録審査に携わってきましたが、いつの間にかキラキラっとアートコンクール出身でアートビリティ登録作家に加わり活躍されている方が20人以上になっていました。それは、18歳でコンクールを卒業した後の、子どもたちが社会と関わる可能性の一つになってきているのではと、両方の審査に関わってこられた私としては嬉しさとともに、もっと積極的にその可能性をアピールすべきではないかと、いつものようにキラキラっとアートコンクールで出会った作品たちとの濃密な2日間を振り返りながら、講評の体を成さないと思いつつも、こんな思いを書き留めてみました。

髙橋 宏和氏社会福祉法人東京コロニー アートビリティ代表

 第22回キラキラっとアートコンクールの審査が無事に終わり、安心した反面、驚きの作品に出会えるワクワクした機会も終わってしまうのが少し寂しくもあります。

 今年も皆さまから1,100点を超える作品をご応募いただき、審査会ではユーモラスな作品に審査会場に笑いが起こり、卓越した技術の作品に驚かされ、裏面に記載されている作品への想いに読みふけってしまう等、キラキラっとアートコンクールならではの緊張感がありつつも和やかな雰囲気の中、審査員として、すべての作品と向き合いながら審査をさせていただきました。

 結果的に優秀賞50作品は決定しましたが、応募いただいた作品は優しさや個性に溢れ、審査から時間が経過した今でも目を閉じると浮かんでくる作品がいくつもあり、それだけ作品に想いを込めて描いた作品が多かったのだと感じます。

 これからも記憶に残る新たな作品のご応募を是非お待ちしております。

眞島 哲也氏株式会社スタートライン 街プロジェクト担当

 私は普段は東京丸の内エリアが目指す「誰もが働きやすい街づくり」を体現すべく、一般企業の障害者雇用の推進と、心のバリアフリーが醸成される街での活動を進めています。今回はゲスト審査員として本審査から皆さんの作品と関わりました。

 作品の第一印象は、繊細さと力強さ、そして自分らしさのあるものばかりで、その魅力に圧倒されました。描いているものをみると、大好きなものを描く人がいれば、存在しないが描きたいものを描く人がいる。見えているものを描く人がいれば、人からは見えない自分の気持ちを描く人がいる。皆さんが躊躇なく「自分らしさ」を描き、作品に触れた人は「その人らしさ」を尊重し、アートを介して関わり合う場が生まれていることに大変意義を感じました。

 キラキラっとアートコンクールは、あたりまえのようにホームページから全作品を閲覧することができ、あたりまえのように作品が街の中で展示されます。そのあたりまえが皆さんの可能性を応援しています。このキラキラっとアートコンクールを通して、これからも自分らしさを描く仲間を一緒につくっていきましょう

野口 玲一三菱一号館美術館 上席学芸員

 今回はレベルの高い応募作が多いと感じました。細かいところまで行き届いた神経、驚くほどのこだわり、抜群の配色センスを感じさせる作品などたくさんで、選ぶのに大変でした。

 楽しんで描いているうちに上手くなるのなら良いのですが、私はそれを素直に喜べないところもあります。上手な作品ばかりが選ばれてしまうと、これから応募しようと考える人が遠慮してしまうのではないだろうか。選ばれた作品がお手本になってしまうのではないだろうか。

 きれいに仕上がった作品ばかりが良い作品ではないと思います。描こうとする対象を良く見ているか、その人なりの面白い視点が生かされているか、楽しい気持ちで描いているか、それぞれのあり方で作品が出来上がっているのが大切なことだと思います。見栄えが良いとか良く仕上がっているかとかは、たまたまそうなっていれば良いのではないでしょうか。審査する立場としては、描く皆さんのそれぞれに楽しい気持ちをキャッチしたいと考えています。

中島 篤三菱地所株式会社 執行役社長

 第22回キラキラっとアートコンクールにご参加いただきました皆様、このたびは作品のご応募、ご協力、誠に有難うございます。

 今回、主催者代表として初めて審査する立場で皆様の作品と向き合うことになり、緊張感と新鮮な感覚をもって臨んだ審査会となりました。その中で3点ほど感じたことがあります。

 1点目は、数多くの魅力的な作品から優秀賞を選ぶという難しさを実感したことです。私自身は芸術の専門家ではないので大きなプレッシャーを感じましたが、子どもたちのコメントを読みながらその絵を描くに至ったバックグラウンドを知って感銘を受けた作品や、私自身が気付かされる一瞬があった作品などを選びました。絵を審査しながら、実は自分自身が学びを得る面もあったように感じております。

 2点目は、コロナ禍を経て絵がどのように変わったのだろうという点です。外出して様々な刺激を受ける機会が増えた影響なのか、明るい彩色の絵や、旅行や食べ物に関する絵が多かったように思いました。

 3点目は、本審査に先駆けて開催される一般審査のあり方に関することです。今年は入国規制が解除された事もあり多くの外国人観光客の方が興味を持って一般審査に参加されたと聞いています。絵画は言語の違いを超えて人と人を結ぶ象徴となるように感じました。今後、幅広い方々に鑑賞して頂けるコンクールにするためにどうすべきか、私達としても引き続き考えていきたいと思っています。

 このコンクールは、すでに20年以上の歴史が紡がれ、街の魅力の一部になってきているように感じております。これからも皆様と一緒に育てていきたいと思っておりますので変わらぬご愛顧を宜しくお願い申し上げます。