審査員講評

O JUN氏画家・東京藝術大学教授

 全国から1,000点以上の応募作品が寄せられてその中からわずか50点(今年は51点)が受賞、展示を果たす。コンペのシステムとはいえ、毎年のことではあるが複雑な思いは残ってしまう。絵を描くことの行為と意味は描いた本人だけが、密かな充実と少しの疲労とともに知っている。その記憶がまた次の1枚に向かわせるのだ。今年もすべての参加者に歓びの気持ちを述べたい。その上で、今年の受賞者に心からその成果を讃え、お祝いを申しあげたい。

 今年は特別な年になった。忌まわしい厄災の下で私たちはいまなお不安と恐怖におびえている。人間の歴史の中で過去に幾度も同じようなことを体験してきた。それらを言葉で記録したものもあれば絵に描き残されたものもある。そのような“記念”の仕方を繰り返してきた。今回寄せられた作品には何が見て取れるだろうか?どの絵も、虫や動物や花、愛しい人や身近なもの、山や空が一心に見つめられて描かれている。それを描く一人一人の姿が想像されるばかりだ。絵を描くことが何にも侵されず邪魔されずただ一心に注がれるわずかな時間が感じられるだけだ。絵を描くことの素朴で力強い姿が見える。誰もが、一つの時代の或る一日を生きる唯一人の姿を記念しているのだ。本当の「特別」はここにある。

青栁 路子氏東京藝術大学准教授、教育学研究者

 今年のコンクールにも、1,100点を超える作品の応募がありました。応募作品から感じさせられたのは、例年とは異なる新型コロナウィルスの影響下であっても、子どもたちに変わらず絵を描く時間と場所があったということです。もちろん、新型コロナウィルスは子どもたちの日常に、少なからず影響を及ぼしたし、今も影響を与えていると思います。それでも、どんなに小さな紙でも、手元にあるわずかな画材でも、自分の世界を表現したり、好きなもの・好きなことを自分なりにとらえて描こうとしたりすることは、子どもたちの喜びや生きる支えのひとつになっているのではないかと感じさせられました。そして、応募作品からは、子どもたちが絵を描くことを大切に思ってくれている先生方、保護者のみなさんの思いも、これまで以上に伝わってきました。

 選ばれた優秀作品は魅力的な作品ばかりです。惜しくも優秀作品に選ばれなかった作品にも力作がたくさんありました。作品を作るときに子どもたちはどのように手を動かしていたか、どういう表情をしながら描いていたか、その色や対象を選んだのはどのような思いからか、作品を完成させるまでにどんな格闘や工夫があったかなどに思いを馳せながら、多くの方に子どもたちの作品を見ていただきたいです。

西田 克也氏西田克也デザインオフィス グラフィックデザイナー

 第19回キラキラっとアートコンクール1次審査の会場も、前回に引き続き丸ビルホールでしたが、その1年の間にこの会場で行われるはずだった肝心の第18回優秀賞の表彰式は新型コロナウイルス感染症の流行が本格化するに及んで中止に。そんな何か釈然としない想いで今回会場に足を踏み入れましたが、会場狭しと整然と並べられた作品が目に飛び込んでくるや否や、モヤモヤした想いも吹き飛んで、いつものワクワク感に浸りながら1,000点を超える作品から150作品に絞り込む審査に臨んだわけです。会場の全員が白手袋とスリッパ、そして前回とは違い(この状況下、当然のことながら)マスクを着用し、ほとんど静寂の中で審査員それぞれの想いで作品と向き合うことができたような気がします。

 それから1週間おいた本審査。何回経験しても悩ましい150作品から50作品を優秀賞として選出しなければならないこの苦行に臨みましたが、やはりその選出の縁となるのは審査員全員の総意であり、当然のことながら作品に対する個人的な思い入れを断ち切らなければならないことも(1次審査の時もですが)しばしばありました。それは個人的には悔いが残ることになるわけですが、不思議なことにそれらの作品は僕の記憶の中にいつまでも残ることになるわけです。

髙橋 宏和氏社会福祉法人東京コロニー アートビリティ代表

 第19回キラキラっとアートコンクールは感染予防という新しい生活スタイルを送る中、作品応募に影響がでないか心配されましたが、蓋を開けてみれば1,000点を超える応募をいただきました。例年と変わらず多くの応募があったことに安心したのと同時に、本コンクールが多くの応募者の目標になっていると改めて感じ、審査員一同、改めて気が引き締まる思いで審査に臨みました。

 審査では例年通り応募作品のすべてを1点1点確認し、時に審査員同士で意見交換しながら丁寧に審査を行いました。名前は憶えていなくても絵のタッチや世界観で、昨年も応募があった応募者は憶えているもので、イメージに残る個性的な絵が多いのも本コンクールの特徴かと思います。緻密で真似のできない丁寧に描き込まれた作品、大胆な色使い、ユーモア溢れるキャラクター等、審査が終わった今でも頭にループしてしまう程、技術面だけではなく作者の感情が表現できているインパクトの強い作品を中心に選びました。

 個性的な作品が集う審査は非常に難しいですが、絵を完成させた時の達成感や充実感を忘れずに、今後も絵を描き続けてほしいと思います。審査員を更に悩ませる新たな作品のご応募を今後もお待ちしております。

吉田 淳一三菱地所株式会社 執行役社長

 本コンクールは皆様のお力を賜り、今年で19回目になります。

 コロナ禍が社会に色濃く影響する中、今年も全国から1,140点もの多数の作品のご応募を頂き、実に想像性豊かな作品をお迎えし、改めて皆様と本コンクールを介して感動を分かち合うことができました。

 色々なイベントが中止や延期になる中、学校にも行けない状況で、子ども達も先生方も大変だったろうと思います。その中で、子ども達やご家族の皆様はもちろん、絵画を指導し、製作を支援して頂いた先生方、関係者の方々に心より感謝申し上げます。

 今回は、絵の製作におかれて、外出や遠出が難しかったであろうこともあり、題材としては、身近なもの、ふつうのものを取り上げた作品が多く、日常のありがたみや温もりを再評価したコンクールとなったことが印象的でした。

 難しい生活環境の中、これほどの作品数が創作され、絵の中にそのような優しさやいとおしさが紡ぎ出されたことは、芸術、あるいは人間が持つ力強さの現れのように感じ、社会の希望であるように感じています。

 今後、全国9会場で作品展を巡回していき、会期終了後も一部の絵については、弊社グループ各社の受付や会議室等で展示し、目に触れて楽しんで頂けるようにしていく所存です。今後も応募者の皆様、審査員の方々をはじめ、作品をご覧いただく全ての皆様の変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

野口 玲一三菱一号館美術館 上席学芸員

 新型コロナウィルス感染症が広がる状況下、外出したり人と交流したりすることがままならない状況の中で、皆さんの絵がどのような影響を受けることになるのか、心配と関心と半々な気持ちで審査に臨みました。

 旅行に出かけたり、家族以外の人にじっくり接したりという絵は、やはり多くはなかったようです。とはいえ皆さんがそれぞれ思い思いに描いている姿は作品から伝わってきて安心しました。やはり楽しい気持ちで描いてほしい。

 皆さんの絵に接して、改めて「良い絵」とは何だろうと考えました。他の誰でもなく自分のために描いてほしいし、上手に描けていれば良いというものでもありません。描いた人がいま見ているものが何なのか、どこに注目しているのか観る側に伝わってくるような絵が、その人にしか描けない絵なのだと思います。そういう絵を選びたいと思いました。