審査員講評

O JUN氏画家・東京藝術大学名誉教授

 今年で20回を迎える「キラキラっとアートコンクール」に今回も多くの応募作品があった。絵は、すべて、よかった。何かを見たり、思い出したり、また描いて見た、もう二度と描けない…、1,147人の絵を描く動機と理由がすべての絵にあふれていた。でも、コンクールなので今年も50/1,147作品をなんとか展示してみます。

 ところで、回を重ねるなかで見えてくるものはなんだろう。審査を終えて思い出す絵があります。入選した絵はこの作品展でもう一度見ることができますが、しなかった絵はおそらく私はもう見ることができません。しきりに思い出す絵があります。その絵を入選させられなかったことはとても残念です。でも、そのときは見えてこなかったのです。そもそも絵が見えるということはどういうことなのだろう?それはもしかすると絵を描くことよりもわからないことのように思えます。見えていたものが見えなくなったり逆に今まで見えなかったものがふいに見えてくる、絵を描いているときにも絵を見ているときにも起こります。それはきっと絵の問題ではないのでしょう。私たちの目や心の問題な気がします。このコンクールで毎年たくさんの絵を見ていると、じっと動かない一枚一枚の絵が点滅して私の目と心を頼りなく心細くさせます。皆さんの描いた絵の前で私も点滅しているのだろうと思います。

 依然、新型コロナウイルスの不安の中ですが、どうか皆さん、健康に気を付けてこれまで通り絵を見たり描いたりしていってください。

青栁 路子氏東京藝術大学准教授、教育研究者

 第20回を迎えた本年度のコンクールも、たくさんの力作、魅力的な作品が寄せられました。本コンクールの魅力は、鉛筆画、クレヨン画、水彩画、油彩画、そして版画、切り絵など「絵画」の幅広いジャンルの応募があること、さらに描かれる内容も、身近な人から風景、動物、大好きなもの、想像画から抽象画まで多様であることです。

 どの作品にも、一人ひとり異なる、子どもたちの豊かな世界があらわれています。子どもたちが描くこと、作ることを楽しみ、その世界に没頭することができていることが感じられ、観ている私の心があたたまり、また驚嘆させられました。

 本年度開催された東京パラリンピックに出場したアスリートは、競技をしているときは障がいを感じないと話していました。本コンクールに応募した子どもたちも、描いているとき、作品をつくっているときは障がいを意識することなく、一人の人間として充実した時間を過ごせているのだろうと思います。そのような時間は生きる活力となり、人生を豊かなものにします。そうして生まれた子どもたちの作品を、ぜひ多くの方に観ていただきたいですし、これからも子どもたちが描き、作る、時と場が守られることを願っています。

西田 克也氏西田克也デザインオフィス グラフィックデザイナー

 今年20回目を迎えたキラキラっとアートコンクール。去年から続いたコロナ禍のもとでの開催で、応募状況はどうなるのかと心配でしたが、どっこい、子どもたちの表現意欲は衰えることはなく、多分いろいろな制約の中で、だからむしろ対象にじっくり向き合った様々なアプローチの絵が、1次審査の会場である丸ビルホールで私たち審査員を迎えてくれました。そして感性の格闘技!?の開始。子どもたちの描いた絵のオーラに飲み込まれないように居住まいを正し、ちょっとくたびれた感性に活を入れてくれそうな絵に出会う度にかがみ込んでは作品を手にし、そんなことを繰り返しながら、見たこともない色彩やカタチを見つけた悦びを少しでも多くの人たちと分かち合いたく、そんな作品を沢山の作品の中から自分なりに選んだつもりです。

 それから2週間後、1次審査で選んだ150作品から優秀賞として50作品に絞り込む本審査は、選考会場の雰囲気や選考方法が異なり、会場に並べられた作品は全く違って見える事もあり、新しい発見があってラッキー!と感じる事がしばしば。しかし今回は、1次審査で選んでいたのに本審査で見逃し、優秀賞が決まった後に気がつくという、もちろん私が選んだからと言って優秀賞に選ばれるかどうかは別として、作品に対して申し訳なかったと、悔いが残ったことを告白して、講評の終わりにします。

髙橋 宏和氏社会福祉法人東京コロニー アートビリティ代表

 第20回キラキラっとアートコンクールでも1,000点を超える作品が全国から集まりました。昨年に続き表彰式はオンラインとなり、優秀賞を受賞された皆様に直接お会いできないのはとても残念ですが、優秀賞を受賞された50名の皆様、この場を借りてお祝いを申し上げます。

 審査会では、どのような気持ちで作品を描いたのかを想像し、すべての作品に向き合って審査をしていますが、個性や感情が明確に表現されている作品ばかりではなく、一度見ただけでは、そのような部分に気付き難い作品もあるので、見逃さないようにタイトルや作品への想いも忘れずに確認し、気になる作品は何度か見直すようにしています。時には審査員が応募者に代わって、気になった作品を他の審査員に紹介している場面もあり、今年も例年通り白熱した審査会でした。技術、作風、テーマ、構図、作品への想い等、すべてが作品を見た人に影響を与える要素となり、審査をする上で大切にしていますが、そのような点においても、今年も個性的な作品が多く集まった審査会でした。

 個性的な作品が集う審査は非常に難しいですが、絵を完成させた時の達成感や充実感を忘れずに、今後も絵を描き続けてほしいと思います。審査員を更に悩ませる新たな作品のご応募を今後もお待ちしております。

吉田 淳一三菱地所株式会社 執行役社長

 本コンクールは、皆様のご参加とお力を頂き、今年で20周年という大きな節目を迎えることができました。

 残念ながら昨年に引き続きコロナ禍の影響を強く受けた年となりましたが、今回は前年に比して応募数が増え、様々な力作を目の当たりにすることができたことはコロナ禍においてこれ以上ない僥倖であり、深く皆様に感謝するところです。

 今回心に残ったのは、その時々に感じた「感覚」を素直に表そうとする作品が多かったことです。いろんな色を使いながら大好きなお母さまと一緒にいる喜びを表したものや、「夢」を具体的な形や叶えたい姿ではなく、こんがらがった心の動きなどの心象風景を描いたものなどが寄せられ、コロナ社会という時代性を背景に、時に鋭くもやるせない悲しさとか、その中に息づく優しさなどが随所に見られたように思います。

 今回38都道府県から絵の応募を頂き、20年かけて全国に広がって、大きなコンクールに育って参りました。今後、当社関係施設などを活用し、さらに周知する地域を広げ、もっと皆さんに、このコンクールが持つ可能性が知れ渡り、子ども達も私達も成長していく流れが作れたらと願っております。

 今後も応募者の皆様、審査員の方々をはじめ、作品をご覧いただく全ての皆様の変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

野口 玲一三菱一号館美術館 上席学芸員

 最初の緊急事態宣言が実施されてから1年半あまり、新型コロナ感染症の状況下で他人との接触が制限されるようになって、皆さんの生活はどのように変化したでしょうか。そのことが作品に現れているのではないかと考えています。同じ時間の長さでも、大人にとってより、子供にとっての方が長く感じられますから、その影響もずっと大きいのではないのでしょうか。こうした制約の中で、描くことが気晴らしになったり、救いになったりしたら良いなと思います。

 描くからには楽しんで描いてほしい。うまく描こうとかきれいに完成させるよりも、自分が何に注目して、何を感じて描こうとしたのかが表れているのが良いと思うし、そのような作品を見つけ出したいと考えています。

 正直なことを言えば、優秀賞を逃した中にも素敵な作品はあったと思います。審査をする眼は絶対ではないのです。惜しくも入選を逃した作品の中に、見逃してしまったものがあるのかもしれません。だから入選しなくても、受賞できなかったとしても残念に思うことはありません。描くことを楽しめるなら、ぜひまた出品してください。良いところは必ず見つけ出したいと思っていますから。