審査員講評

※肩書きは2018年10月時点

O JUN氏画家・東京藝術大学教授

 「キラキラっとアートコンクール」も17回目を迎え、今年も全国から多くの応募があった。全ての選考を終え、あらためて作品を総覧して思うことを記しておこう。今回選考に立ち会われた先生やスタッフの方々から、この数年で作品の傾向に変化が見られると感想を述べておられた。私も途中からこのコンクールに関わるようになり、同様の印象を持っていた。彼らの作品にこれまで特徴的な傾向であるイメージを繰り返し画面一杯に描き込む構成の他に、イメージ自体を大きく捉えた作品が増えてきているように思う。年齢が高くなり高校生くらいになると、描く動機、目的がより自覚的になり彼らの観察眼や描写力がそのモノの造りや細部に注がれ明瞭さが増す、あるいは画面全体を捉える描き広げによってイメージが明快になる。その結果、日常の風景や一見何の変哲もない出来事が鮮やかに絵画的世界として立ち現れるようになる。これら様々な変化と多様は彼らが通う学校の先生方の現場での地道な研究と熱心な指導による大きな成果であろう。そこには私たちが住み暮らす社会の動向やそれに対する考え方、感触、空気も映り込んでいるように思う。それは、私たちが日々交わす言葉やものの手触りだったり、様々なメディアを通して見え聞えるリアルな日常で、それらを見る目は健常と障がいの隔壁を無化している。一方で彼らの制作に見られる反復するイメージ、ひたすら点を打ち続け、線を引き続ける行為によって現れる圧倒的強靭さはやはり私たちの身体や行為の意味を問うている。ただ一枚の絵から教わることは、なお依然として多い。

青栁 路子氏東京藝術大学准教授、教育学研究者

 17回目を迎えた本年度のコンクールでも、幼児から高校生までの幅広い年齢層から多数の応募がありました。優秀賞に選ばれた作品はもちろん、応募作品一点一点が魅力にあふれていました。
本コンクールでは、ペンや鉛筆、水彩、版画、切り絵、油彩など、幅広いジャンルの応募作品が見られるのが特徴的です。子どもたちにとって身近な画材、描きやすい画材があることがわかります。中には初めて油彩に取り組んだという作品もあり、子どもたちが絵を描くことにおいても、いろいろな挑戦をしているのだということを感じさせられました。 作品に描かれているのも、大切な人、大好きなもの、色濃い思い出、風景や特定のモチーフ、自分の内奥の世界など多岐にわたります。作品からは、言葉ではなく絵画だからこそ表現できる思いや、子どもたちの世界の見方・とらえ方、描いているときの集中力や格闘、傍らで描くことを見守り励ます人の存在が伝わってきました。
平成30年6月13日に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が公布、施行されました。法律の目的に「文化芸術活動を通じた障害者の個性と能力の発揮及び社会参加の促進を図ること」があげられています。一枚の白い紙、白いキャンバスの上に、障がいのある子どもたちの個性が表れ、もっている力が発揮されます。そうして作られた作品はコミュニケーションの一つの手段となり、子どもたちと私たちをつないでいきます。作品を見、感じていただくことで、より多くの方々に子どもたち一人ひとりと〈対話〉していただけることを願います。

西田 克也氏西田克也デザインオフィス グラフィックデザイナー

 毎回全国から寄せられる多数の応募作品を一堂に会し、しかも心地よく作品と対峙できるようにとの主催者側の思いから、一次審査会場はオフィスビルの広いフロア。会場に足を踏み入れた瞬間、思わず「おっ、凄いことやっているな!」と。什器も何もないフロア一面に応募作品が整然と並べられ、様々なガンマ波?を放出しながら、審査を待っていました。これはもう絶景でしょう! 一年に一度きりの、この一瞬の感動があるからこそ、全作品の中から優秀賞50点を選ぶ苦行にも耐えられるわけです。それではいよいよ格闘技場へようこそ!何故って…広い会場を行きつ戻りつし、時には俯瞰しながら、あるいは座り込んで作品を手にしてメッセージを聞き逃すまいと聞き耳を立てる。肉体的にも精神的にも選び終わった後はくたくた。それでも止めたくないのは、審査員それぞれ思いの総和として選ばれた優秀賞50点と、時を置いて然るべき装いとあるべき場所で、今度はじっくりと対面し、至福の一時を過ごすことができるから・・・。

髙橋 宏和氏社会福祉法人東京コロニー アートビリティ代表

 審査に継続して関わるようになって、作品の持つ個性の豊かさに年々、審査員が作品を審査する距離が近づいてきていると感じます。つまり、気になる作品が多くなっている事だと実感した審査会でした。ご応募いただいた皆様としては思い通りに描けた作品、もう一つ上手くいかなった作品と様々にあると思いますが、作風や技量を超えて訴えるキラキラっと輝く個性がこの審査会の一番の魅力だと改めて実感しました。
現在の効率化された社会の中で、絵を描くというある意味アナログな行為は、自己表現をする貴重な機会になると思いますし、また、完成した作品を通してコミュニケーションも広がる可能性がある大切な行為です。さらに、本コンクールは応募作品の全てがホームページ上で公開される事で、過去に描いた作品をデジタルデータとして確認出来るという事も貴重な事です。作品を描いた当時の自分を振り返る事が出来るのは成長した際に貴重な経験となるでしょう。今後も多くの力作の応募を願っています。

吉田 淳一三菱地所株式会社 執行役社長

 今年で17回目を数える本コンクールに、全国から1486作品のご応募をいただきました。41の都道府県から団体応募185団体(1,447作品)、個人応募39作品となります。最年少のお子さんは3歳、新規でご応募いただいた作品もたくさんありました。こうして回を重ねるごとに、本コンクールを経験された方が増えていくのは、主催者としてとても嬉しく思いますし、またご尽力頂いている各関係者の方々に心より感謝申し上げます。
今回も力作が揃いました。どの絵も、ご応募いただいたお子さん方の日常生活の凝縮であり、それが個性となって、見る者に語りかけてくる、頼もしさを感じる絵ばかりです。
今年から、本作品展の会場が、これまでの7会場から広島市が加わり8会場となります。また会期が終了した後も、一部の絵については三菱地所グループ各社の受付等に展示して、来訪される方々にも楽しんでいただけるようにしております。 今後も応募者の皆様、審査員の方々をはじめ、作品をご覧いただく全ての皆様の変わらぬご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

高橋 明也三菱一号館美術館 館長

 出品者が思い思いに楽しんで描いている様子が伝わってきて、楽しい審査になった。コンクールが回数を重ねることで、作品の表現の幅が広がり、深みが増してきたように感じる。作者のそれぞれが描く素材と対話し、そこから得られる効果を確かめながら自らの表現を深めていく。ひとつひとつの作品からその軌跡が伝わってくるようだ。模索しながら描き進め、相応しい表現を求めることに、障がいのあるなしは関わりないのではないか。作品を見終えてそのように感じた。